あなたの孤独度について、グローバルに定着している「UCLA孤独感尺度」で一度測ってみよう。結果はどうだろうか? 孤独がどのように生み出されるかを考えるとき、従来の構造的問題に加えて、現代的な新たな要因が加わっていることを思い出してほしい。「世界的なリーディング・シンカー」といわれるノリーナ・ハーツ(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン名誉教授)の最新刊『THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか』より一部をご紹介する。

写真はイメージ。Photo: Adobe Stock

孤独とはなにか

「UCLA孤独感尺度」は、1978年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校の3人の研究者が、孤独という主観的な感情を数値的に測定しようと考案したツールだ。20の質問は、回答者が他人とどのくらいつながり、サポートされ、ケアされていると感じるかとともに、どのくらい排除され、孤立し、誤解されていると感じているかも測定する。この尺度は、現在も孤独研究の金字塔的な基準と考えられている。

是非あなたも一度やってみてほしい。

各項目の該当レベルに丸をつけて、最後に合計点を出すだけだ。合計点が43点以上の人は孤独と判定される。孤独の定義を広げて(友達や家族や仕事の同僚、近隣住民だけでなく、雇用主や市民や政治家や国との関係を含める)もう一度やってみると、結果はどのくらい変わるだろう。

私の定義では、孤独とは、愛や仲間や親密な人間関係が欠如した状態に限らない。また、日常的に交流する人(パートナー、家族、友達、近隣住民)に無視されているとか、相手の目に入っていないとか、大切にされていないという感覚だけでもない。それは、一般市民や雇用主、地域社会、政府の支援やケアがないという感覚でもある。また、他人だけでなく自分自身からも切り離されている感覚や、政治的・経済的に排除されている感覚も含まれる。

つまり私の定義では、孤独とは人間の内面的な状態であると同時に、存続に関わる個人的、社会的、経済的、政治的な状態でもあるのだ。これは、カール・マルクスやエミール・デュルケーム、カール・ユング、ハナ・アレントといった思想家や、アイザック・アシモフ、オルダス・ハクスリー、ジョージ・エリオット、そしてより最近ではドラマ『ブラック・ミラー』を生み出したチャーリー・ブルッカーらの作家が考えるものに近い。

現代の孤独は、グローバル化や都市化、格差拡大、パワーの非対称によって形を変えてきた。人口動態の変化やモビリティーの高まり、テクノロジーによる破壊、緊縮財政、そして今、新型コロナウイルスの影響も受けている。それは周囲にいる人とつながりを持つことへの渇望、愛し愛されたいという切望、そして自分に友達がいないと感じるときの悲しさを超える感覚だ。自分が政治家や政治と断絶しており、仕事や職場から切り離されて、社会の進歩から取り残され、無力で、目に見えない存在で、声がない存在だと感じることが含まれる。孤独とは、他人を身近に感じたいという欲求と同時に、自分の声に耳を傾けてもらい、自分に目を向けてもらい、気にかけてもらい、行為主体性を持ち、フェアで親切で敬意を持って扱われたいというニーズの表れでもある。

この定義を踏まえて、自問してみてほしい。あなたが最後に周囲の人(家族、友達、隣人、市民)から孤立していると感じたのはいつだろう。自分が選んだ政治家に気にかけてもらっていないとか、声を聞いてもらえていないと思ったのはいつだろう。あるいは、権威のある人が、あなたの苦労を考えてくれていないと感じたのはいつだろう。職場で無力だとか、無視されていると最後に感じたのはいつだろう。

あなただけではない。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック前の2019年時点で、世界の民主主義国に住む人の64%が、自国政府は自分の利益のために働いてくれていない、と感じていた。また世界の労働者の85%が、会社や仕事から切り離されていると感じていた。米国では、他人でもたいてい信頼できると考える人は30%しかいなかった。1984年の50%から大きな減少だ。世界がこれほど不信感に満ちているように感じられることがあっただろうか。

なぜ世界はこれほど不信に満ちているか

このような状態は、偶然または突然起こったわけではない。ここに至るまでの道のりがあった。さまざまな原因と出来事が絡み合って、私たちは個人としても、社会としても、孤独で原子化してきたのだ。

よく言われることだが、これにはスマートフォンと、とくにソーシャルメディアの影響が大きい。それらのお蔭で、私たちは周囲に目を配らなくなり、人間的に最悪の部分を煽られて周囲に怒りを覚えるようになった。さらには「いいね」やリツイートやフォロワーを求めて演技じみた振る舞いをし、強迫観念に駆られ、思いやりのあるコミュニケーション能力を失ってきた。コロナ禍によるロックダウン中もそうだった。ローマ法王がフェイスブックでミサを生配信し、人気DJのバーチャルダンスパーティーに10万人以上が集まり、地域単位のフェイスブックグループが次々と誕生する一方で、人種差別的なコメントやヘイトスピーチが急増して、陰謀論が瞬く間に広がった。

しかし、スマートフォンとソーシャルメディアは、パズルの二つのピースに過ぎない。現代の孤独危機の原因は無数にあり、多岐にわたる。

構造的かつ制度的な差別は、孤独の大きな原因であることは間違いない。2019年に英国で約1000人を対象に行われた調査によると、職場または自宅近くで人種的または民族的差別を経験した人は、孤独を感じる可能性が21%上昇する。また、2020年に米国人1万人以上を対象にした調査によると、黒人と中南米系は、職場で白人よりもはるかに大きな孤独と疎外感を覚えていた。性差別も、孤独感の高まりと関係がある。

こうした長年の構造的問題に加えて、孤独をもたらす新しい要因が生まれている。たとえば大都市への移住や、大掛かりなリストラや、ライフスタイルの根本的な変化により、伝統的な意味での「人との関わり」は著しく減った。10年前と比べると、世界の多くの地域で、人々は教会に通わなくなり、PTAや労働組合に加わらず、他人と一緒に食事や生活をしなくなり、親しい友達を持たなくなった。人との接触そのものが減り、セックスさえも減っている。

また、たとえ物事を「一緒に」やるときでさえ、人間の物理的なプレゼンスを伴わないことが増えた。アプリでヨガのクラスに「出席」し、カスタマーサービスのチャットボットと「話」をし、ネットで教会の礼拝を見て、アマゾンGO(人と接触せずに買い物ができるアマゾンの新しいコンビニだ)で買い物をする。コロナ禍の前から、「コンタクトレス(非接触)」は、現代人が積極的に選択するライフスタイルになりつつあったのだ。

その一方で、あらゆる出自の人が集まり、交流し、絆をつくる地域社会のインフラは放置され、最悪の場合、解体されてきた。とくに2008年の金融危機後にひどくなり、緊縮政策によって世界中の図書館や公園、遊び場、そしてユースセンターやコミュニティーセンターが大打撃を受けた。英国では、2008年からの10年間で、ユースクラブの三分の一と、公立図書館約800ヵ所が閉鎖され、米国では連邦図書館の予算が40%以上減少した。

なぜそれが重大な問題なのかというと、こうした場所は、自分とは異なる人と平和的に共存する方法や、多様な意見を調整する方法を学び、市民的な振る舞いとインクルーシブな民主主義を練習する場所でもあるからだ。このようなスペースがなければ、私たちがお互いの溝を埋めるのはますます難しくなる。

ノリーナ・ハーツ(Noreena Hertz)
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン名誉教授
戦略、経済的リスク、地政学的リスク、人工知能(AI)、デジタルトランンスフォメーション、ミレニアル世代とポストミレニアル世代について、多くのビジネスパーソンや政治家に助言している。「世界で最もインスピレーションを与える女性の1人」(ヴォーグ誌)、「世界のリーディングシンカーの1人」(英オブザーバー紙)と評価され、世界のトレンドを見事に予測してきた。19歳で大学を卒業し、ケンブリッジ大学で博士号を取得した後、ペンシルベニア大学ウォートンスクールでMBAを取得。ケンブリッジ大学国際ビジネス・経営センターの副所長を10年務め、2014年より現職。最新刊『THE LONELY CENTURY 私たちはなぜ「孤独」なのか』が7/14発売。